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消化器内科・胃腸科の病気2

 

便秘症

​便秘とその種類

 

便秘は内科の外来診療において最もよくみられる病状の一つです。便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」のことを指します。大きく分けると次の2つのパターンに分けられ、このどちらも便秘と呼びます。

 

  1. 排便の回数や量が少なく、腸の中に便が滞る(宿便)タイプ
     

  2. 回数や量は問題ないが、便が快適に、完全に排出できず、残便感があるタイプ

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図1. ブリストル便形状スケール

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​便のタイプ

便には硬い便、軟らかい便、下痢などがあり、その形状によって7つのスケールに分かれています(図1)。

理想的な便はスケール4のいわゆるバナナ状の便です。硬便タイプの方は何回トイレに行ってもウサギの糞のような小さなコロコロ便が出るばかりでスッキリしません。また無理に出そうといきむと痔の原因となったり、心血管疾患を引き起こしたり、生活の質を大きく損なう可能性もあります。逆に軟便タイプの方も排便後に直腸内に便が残っていることがあり、残便感に悩まされることがあります。

「たかが便秘」と放置していると、重篤な病態になることもあります。

 

● 大腸がん

便秘症の背景に大腸がんが隠れていることがあります。大腸がんは進行すると大腸の通り道をふさいでしまうため、便秘になることがあります。特に「以前はスムーズに便が出ていたのに急に便秘になった」という方は自覚症状がなくとも一度、大腸カメラを受けることをお勧めします。

● 腸閉塞、大腸穿孔

便秘が高度になり、大腸内に宿便が大量にたまると、ついには便が出せなくなり腸閉塞になってしまうことがあります。また腸管内の圧が高くなり、大腸の壁に穴が開いてしまう穿孔に至ることもあります。

● 心血管疾患

便秘になると排便時に力むことが多くなります。その時に血圧や脈拍が上昇し、心臓に負担をかけてしまいます。実際、便秘は重症化するほど心筋梗塞や狭心症等の心血管疾患の発症率が増加するという報告があります。

便秘を放置した結果、これらのような重篤な病気に発展し、命を落とすケースも見られます。実際、慢性的な便秘がある方とそうでない方を比較すると、便秘患者さんは生存率が低いことが証明されています(図2)。

図2.慢性便秘の有無による生存率の違い

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便秘の治療

便秘の治療には、まず生活習慣の改善を試しましょう。適度な運動、水分摂取、食物繊維の摂取、十分な睡眠をとること、が大事です。どれも現代人に不足しがちなものです。あしかり内科では、消化器内科専門医が便秘解消の生活習慣や便秘解消に有効な運動方法、マッサージなどの指導をおこなっています。是非お気軽にご相談ください。

​便秘薬について

生活習慣の改善で解消できない便秘には便秘薬の使用をおすすめします。現在、日本の薬局やドラッグストアではOTC医薬品といって処方箋なしで購入できる医薬品があります。またオンラインストアなどでは効果効能が不確かな健康食品なども販売されています。OTC医薬品は正しく使えば良い治療となりますが、間違った使い方をしたり必要な検査を受けずに使用したりすることで思わぬ事態を招くこともあります。できれば医師の指導のもと正しい便秘治療薬の使い方をしていただくことをおすすめします。

ご覧のように便秘治療薬にはたくさんの種類があり、注意すべき点も多いです。専門的知識のもと正しい使い方をすれば、理想的な排便コントロールができて満足感も上がるはずです。便秘は命に関わる病態です。重症化する前に一度、あしかり内科にご相談いただければと思います。

 

逆流性食道炎

胃の内容物が食道に逆流する病態を「胃食道逆流症(GERD)」と呼びます。胃の中は、胃酸という強力な酸が常に作られており、これが食道に逆流すると「胸やけ」、「灼熱感」、「胸部痛」などの症状を引き起こします。食道の粘膜は胃酸に暴露すると炎症を起こし、逆流性食道炎となるのです。なお逆流症状はあるのに、食道に炎症がないケースは非びらん性胃食道逆流症(NERD)と呼ばれます。逆流症状は患者さんによって表現の仕方が異なるため、問診で気づかれない場合も多々あります。

逆流症状には以下のようなものがあります。この中に思い当たる症状をお持ちの方は、一度あしかり内科の消化器内科専門医にご相談ください。

 

  • 喉からみぞおちにかけて焼けるような感じ

  • 酸っぱい液体があがってくる

  • のどの違和感、つかえる感じ、物が詰まる感じ

  • 食道の閉塞感

  • 胸のあたりが痛い

  • 原因不明の咳がずっと続いている
     

 
逆流性食道炎の症状があったら

逆流性食道炎が疑われたら、まずは胃カメラを受けましょう。食道粘膜の炎症の有無や、ただれ具合を観察することで重症度を判定し、お薬が必要かを判断します。食道と胃のつなぎ目(食道胃接合部)を締め付ける下部食道括約筋の力が弱くなってしまう状態を食道裂孔ヘルニアと呼びますが、これが見られる方は胃食道逆流症を起こすリスクが高いです。

また胃カメラをおこなうもう一つの目的は、食道がんや胃がんなどの悪性疾患を除外することです。食道がんや胃がんでは逆流性食道炎と似た症状を呈することがあるため、これらを鑑別することは非常に重要です。逆流症状があるのに、胃カメラ検査をせずに漫然とお薬だけを飲んでいると、胃がんの存在に気づかず後で進行した状態で発見されることもあります。あしかり内科では鎮静剤を使用した「辛くない胃カメラ」をおすすめしています。検査は怖いという印象があるかもしれませんが、ぜひお気軽にご相談ください。

胃カメラ(内視鏡検査)

 

逆流性食道炎の治療

逆流性食道炎の治療には、H2ブロッカーやPPI/P-CABというタイプのお薬を使います。これらは胃酸の分泌を抑えることで自覚症状の改善を促します。逆流を押さえるには生活習慣の改善が必要です。一度にたくさん食べすぎないこと、脂肪を含む食事を抑えること、アルコールを控えること、食後はすぐに横にならないこと、寝るときに枕を高くすること、などを心がけるだけで症状がだいぶ緩和されます。

 

機能性ディスペプシア(FD; Functional dyspepsia)

機能性ディスペプシアとは

「ディスペプシア」とは、心窩部痛や胃もたれなどの心窩部(みぞおち)を中心とした腹部症状のことを指します。こうした症状の原因となる器質的な異常が胃カメラや超音波検査、CT検査などで見つからないのに、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する病態を機能性ディスペプシア(FD)と呼びます。

あまり聞きなれない名前の病気だと思いますが、健診受診者の11-17%、上腹部症状を訴えて病院を受診される患者さんの約50%はこのFDに該当するそうです。一昔前までは「精神的なもの」とか「気の持ちようだ」などとあしらわれてきた病態ですが、今では立派な疾患として扱われています。FDの患者さんは身体的、精神的、社会的に生活の質が低下することがわかっています。

機能性ディスペプシアの原因

原因は明確であることは少なく、様々な因子が複合的に関与していると考えられています。胃の排出障害、内臓知覚過敏、社会的背景、ヘリコバクターピロリ感染、酸分泌、遺伝的要因、心理的要因(不安や虐待歴など)、アルコールや喫煙などの生活習慣などが関与していると言われています。「ストレスで胃が痛い」などと昔から言いますが、あれも機能性ディスペプシアの一種かもしれません。

 

機能性ディスペプシアの診断と治療

FDを診断するためには、胃・十二指腸潰瘍や胃がんなど器質的疾患の除外が必要です。胃カメラ、超音波検査、CT検査などを必要に応じておこない、それでも異常が見つからなければFDと診断されます。

FDの治療には、①生活指導・食事療法、②薬物療法(酸分泌抑制薬、消化管運動機能改善薬、漢方薬など)、③ピロリ陽性であればピロリ除菌治療、④抗うつ薬・抗不安薬、⑤認知行動療法などがあります。治療は容易でなく難治性であることが多いです。症状が落ち着くまでに月単位、年単位で取り組みます。

症状の早期解決には、消化器病専門医の診察を受けることが大切です。あしかり内科にはFD治療の経験豊富な医師がおりますので、下記の症状がある方は、まずはお気軽に当院までご相談ください。

  • 心窩部痛または心窩部不快感

  • 胃もたれ

  • 腹部膨満感

  • 心窩部灼熱間

  • 早期満腹感

  • 吐気

 

過敏性腸症候群(IBS; Irritable bowel syndrome)

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛とそれに関連して便秘や下痢などの便通異常が数か月以上続く状態のときに最も考えられる疾患です。排便することで、腹痛症状が和らぐという特徴があります。機能性ディスペプシアと同じく、大腸カメラや超音波検査、CT検査などおこなっても、がんや炎症、癒着などの異常はありません。人間の「脳と腸」は繋がっていると言われていますが、腸の運動や知覚は脳と連動して調整されています。脳が緊張や不安などのストレスを感じると、腸の運動が激しくなり、痛みの閾値が下がった知覚過敏状態になるのです。この状態が強くなるとIBSを発症します。IBSを発症する原因はよくわかっておらず、ストレスや腸内細菌、炎症などが関与して腸の蠕動運動障害が起こることが原因ではないかと言われています。

IBSは一般人口の約10~15%にみられると言われており、「下痢型」「便秘型」「混合型」などのタイプに分類されます。腹痛を伴う便通異常が特徴で、朝の通勤電車や大事な会議などストレスがかかりやすい場面で腹痛や便意などが出現するため、日常生活や仕事などに大きな支障をきたすこともあります。正しく診断するには、大腸がんや大腸炎などの器質的疾患を除外する必要があり、血液検査や大腸内視鏡検査を受ける必要があります。

過敏性腸症候群の治療

IBSはFDと同様に難治性の疾患で、治療は容易ではありません。治療法としてはストレスの低減が有効で、不安や緊張、寝不足などストレス要因を除去することが良いと言われています。食事は消化に良いものを選び、香辛料の強い食事や辛いものは避けます。食物繊維を摂取し、一度にたくさん食べないよう気を付けましょう。FODMAPと呼ばれる特定の炭水化物、人工甘味料を多く含む食品の摂取は避けましょう。

生活習慣の改善をしても自覚症状が良くならない場合には薬物治療が適応となります。便秘型には便秘治療薬が有効で、特にリナクロチド(リンゼス®)は便秘型IBSに適応を持つ効果の高いお薬です。また下痢型IBSではロペラミドなどの下痢止めが有用です。漢方薬、整腸剤、抗うつ薬などが効く場合もあります。これらの治療薬の使い分けはとても難しいため、自己判断で市販薬を使用せず、専門医にきちんと診てもらうことが大切です。

下記の症状でお悩みの方は、あしかり内科に一度ご相談ください。

  • 腹痛

  • 便秘や下痢

  • 腹部膨満

  • 便に粘液が混じる

  • 排便後残便感

  • 嘔気

  • 頭痛

  • ​抑うつ、不安