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【便潜血陽性が危険なのはどうして?】

■便潜血検査とは何か?

■便潜血陽性とはどういうことか?

■便潜血陽性の背後に潜む主な疾患

■放置するとどうなる?便潜血陽性の危険性

■便潜血陽性後に行うべき精密検査

■なぜ定期的な検査が重要なのか?

■日常生活での予防と対策

■医師に相談すべきサインとは?

■よくある質問

 

■便潜血検査とは何か?

①検査の目的と仕組み

便潜血検査は、便の中に微量な血液が含まれているかを調べる検査です。この検査は、消化管からの出血を早期に発見するために行われます。特に、大腸がんの早期発見に有効とされています。出血は目に見えないほど微量であることが多く、便潜血検査によって初めて気づくことができます。

 

この検査には、化学法と免疫法の2種類があります。化学法は、便中のヘモグロビンに反応する試薬を使用し、食事の影響を受けやすいため、検査前に食事制限が必要です。一方、免疫法は、ヒトヘモグロビンに特異的に反応する抗体を用いるため、食事制限が不要であり、日本では主に免疫法が採用されています。

 

 

②検査方法と実施タイミング

便潜血検査は、通常、年に1回の健康診断の一環として行われます。検査方法は、2日分の便を採取し、専用の容器に入れて提出するだけです。これにより、出血の有無を確認します。2日分の便を検査する理由は、出血が断続的に起こることがあるため、1日分だけでは見逃す可能性があるからです。

 

検査結果が陽性であった場合、精密検査が必要となります。精密検査には、大腸内視鏡検査が一般的に行われます。これは、大腸の内部を直接観察し、出血の原因を特定するための検査です。

 

 

 

■便潜血陽性とはどういうことか?

①陽性の意味

便潜血検査で「陽性」と判定された場合、便の中に血液が混じっていることを示しています。これは、消化管のどこかで出血が起こっている可能性を意味します。ただし、陽性だからといって必ずしも重大な疾患があるわけではありません。痔や一時的な炎症など、良性の原因で出血が起こることもあります。

 

しかし、便潜血陽性は、大腸がんや大腸ポリープなどの重大な疾患の徴候である可能性もあります。特に、大腸がんは初期段階では自覚症状が少ないため、便潜血検査での陽性が早期発見の鍵となります。

 

 

②偽陽性と偽陰性のリスク

便潜血検査には、偽陽性と偽陰性のリスクがあります。偽陽性とは、実際には出血がないにもかかわらず、検査結果が陽性となることです。これは、食事や薬剤の影響、痔などの良性疾患による出血が原因であることがあります。

 

一方、偽陰性とは、実際には出血があるにもかかわらず、検査結果が陰性となることです。これは、出血が断続的である場合や、検査の感度が十分でない場合に起こり得ます。

 

これらのリスクを考慮すると、便潜血検査の結果だけで安心するのではなく、定期的な検査と、必要に応じた精密検査を受けることが重要です。

 

 

 

■便潜血陽性の背後に潜む主な疾患

①大腸がんの可能性

便潜血陽性の最も重大な原因の一つが大腸がんです。大腸がんは、初期段階では自覚症状がほとんどなく、進行するまで気づかないことが多いです。そのため、便潜血検査での陽性が、早期発見の重要な手段となります。

 

大腸がんは、結腸と直腸に発生するがんの総称で、日本ではがんによる死亡原因の上位を占めています。特に、40歳以上の人々に多く見られます。早期に発見されれば、治療の成功率が高く、完治も可能です。

 

大腸ポリープや潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患

大腸ポリープは、大腸の内壁にできる良性の腫瘍ですが、放置するとがん化する可能性があります。ポリープは、便が通過する際に擦れて出血することがあり、便潜血検査で陽性となる原因となります。

 

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患も、便潜血陽性の原因となります。これらの疾患は、大腸の粘膜に炎症や潰瘍を引き起こし、出血を伴うことがあります。症状としては、下痢、腹痛、発熱などがあり、慢性的に続くことが特徴です。

 

 

②痔などの良性疾患との違い

痔は、肛門周辺の血管が腫れて出血する良性の疾患で、便潜血陽性の原因となることがあります。特に、排便時に出血が見られることが多いです。しかし、痔による出血と、大腸がんなどの重大な疾患による出血は、症状が似ているため、自己判断で済ませるのは危険です。

 

痔だと思って放置していたら、実は大腸がんだったというケースもあります。そのため、便潜血検査で陽性となった場合は、痔であると自己判断せず、必ず医師の診察を受けることが重要です。

 

 

 

■放置するとどうなる?便潜血陽性の危険性

①早期発見しなかった場合の進行リスク

便潜血陽性の結果を放置すると、重大な疾患が進行するリスクがあります。特に、大腸がんは初期段階では症状が少ないため、便潜血検査での陽性が唯一の徴候であることもあります。これを見逃すと、がんが進行し、治療が困難になる可能性があります。

 

進行した大腸がんは、手術や化学療法などの治療が必要となり、患者の身体的・精神的負担が大きくなります。また、治療費も高額になるため、経済的な負担も増加します。早期に発見し、適切な治療を受けることで、これらのリスクを軽減することができます。

 

 

②無症状でも命に関わる理由

便潜血陽性は、無症状でも重大な疾患の徴候である可能性があります。特に、大腸がんは初期段階では症状が現れにくく、便潜血検査での陽性が唯一の手がかりとなることがあります。無症状だからといって安心せず、検査結果を真摯に受け止めることが重要です。

 

また、無症状のまま疾患が進行すると、気づいたときには手遅れとなる可能性があります。定期的な検査と、陽性結果が出た場合の迅速な対応が、命を守るために不可欠です。

 

 

 

■便潜血陽性後に行うべき精密検査

①大腸内視鏡検査とは

便潜血検査で陽性となった場合、次に行うべき精密検査が大腸内視鏡検査です。これは、肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体を直接観察する検査です。ポリープや腫瘍、炎症などの異常を発見することができます。

 

大腸内視鏡検査は、検査中にポリープを切除したり、組織を採取して病理検査を行うことも可能です。これにより、早期に異常を発見し、治療を開始することができます。検査前には、腸内をきれいにするための下剤を服用し、検査当日は絶食が必要です。

 

 

②他のスクリーニング検査

大腸内視鏡検査以外にも、CTコロノグラフィーやバリウム注腸検査などのスクリーニング検査があります。CTコロノグラフィーは、CTスキャンを用いて大腸の内部を画像化する検査で、非侵襲的であるため、内視鏡検査に抵抗がある人に適しています。

 

バリウム注腸検査は、バリウムと空気を注入して大腸の形状をX線で撮影する検査です。ただし、これらの検査は、異常が発見された場合には、結局内視鏡検査が必要となることが多いため、初めから内視鏡検査を選択することが推奨されます。

 

 

■なぜ定期的な検査が重要なのか?

①40歳以上に推奨される理由

40歳を過ぎると、大腸がんの発症リスクが急激に高まります。加齢に伴い、腸の粘膜細胞に異常が起きやすくなり、ポリープやがん細胞が形成される可能性が高くなるためです。この年齢層から、国のがん検診でも便潜血検査が強く推奨されており、年に1度の受診が基本とされています。

 

また、働き盛りであるこの年代は忙しさから体調の変化に気づきにくく、健康診断を受ける機会も疎かになりがちです。自覚症状がないまま進行する大腸がんを早期に発見するには、定期的な便潜血検査が命を守る大切な手段となります。検査そのものは簡易で痛みもなく、費用も比較的安価なため、積極的に活用すべきです。

 

 

②リスクが高い人の特徴と対策

大腸がんのリスクが高い人には、以下の特徴が挙げられます。

 

・家族に大腸がんの既往歴がある人

・高脂肪・低繊維の食生活を続けている人

・運動不足・肥満傾向の人

・飲酒や喫煙の習慣がある人

・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の既往がある人

 

これらのリスク因子を持つ人は、年齢に関係なく若いうちから便潜血検査や内視鏡検査を定期的に行うことが勧められます。また、生活習慣の見直し、特に野菜や食物繊維を多く摂り、適度な運動を取り入れることが、リスク軽減につながります。

 

 

 

■日常生活での予防と対策

①食生活の見直しポイント

腸の健康を保つためには、バランスの取れた食生活が重要です。特に大腸がんの予防には、以下の食材が効果的とされています:

 

・食物繊維(野菜、果物、全粒穀物など):腸の働きを整え、便通を促進し、発がん物質を排出します。

・乳酸菌(ヨーグルト、キムチ、納豆など):腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を改善。

・オメガ3脂肪酸(青魚、えごま油など):抗炎症作用があり、炎症性腸疾患の予防に寄与。

 

一方で、加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコン)や赤身肉(牛肉・豚肉)の過剰摂取は、大腸がんのリスクを高めると報告されているため、これらの摂取量は控えるようにしましょう。

 

 

②便通と腸内環境の改善

良好な便通は、腸内の老廃物や有害物質を速やかに体外へ排出し、腸管壁への刺激を減らすため、がんの予防につながります。便秘は便潜血の原因にもなりかねないため、日頃から便通を整える努力が大切です。

 

以下のような生活習慣が効果的です。

 

・朝食をきちんととる(腸を目覚めさせる)

・水分をこまめにとる(1日1.5〜2L)

・毎日30分以上のウォーキングなどの軽い運動

・ストレス管理(腸は“第二の脳”と呼ばれ、精神状態に敏感)

 

 

 

■医師に相談すべきサインとは?

①便の色・形・においの変化

便の状態は腸内の健康を反映しています。以下のような異常が見られる場合は、速やかに医師に相談する必要があります。

 

・便の色が黒っぽい(消化管上部の出血の可能性)

・鮮血が混ざる(痔や直腸出血の可能性)

・便が細くなった、断続的に出る(腸に何らかの障害があるサイン)

・悪臭が強い、腐敗臭(腸内環境の悪化)

 

これらの変化は、たとえ一時的なものであっても重大な病気のサインである可能性があるため、自己判断せず、専門医の診察を受けることが重要です。

 

 

②腹痛・体重減少などの伴う症状

大腸の病気が進行している場合、便以外にも以下のような症状が現れることがあります。

 

・持続的な腹痛や腹部膨満感

・原因不明の体重減少

・常に疲れやすい、貧血の症状

・便が出きらない感覚

 

これらは特に大腸がんや慢性炎症性疾患の徴候として見られることがあり、見逃すと重大な事態を招きかねません。日頃の体調変化に敏感になることが、健康を守る第一歩です。

 

 

便潜血陽性という結果は、軽視すべきではありません。たとえ自覚症状がなくても、その背後には大腸がんや他の重大な病気が隠れている可能性があります。特に大腸がんは、早期発見・早期治療ができれば高い確率で治癒可能です。

 

検査を「面倒」「怖い」と感じる方もいるかもしれませんが、年に1回の便潜血検査が命を救う第一歩となるかもしれません。定期的な受診と、陽性結果が出た際の迅速な対応が、自分や家族の健康を守ることにつながります。

 

この機会に、食生活や生活習慣を見直し、予防にも力を入れていきましょう。小さな変化の積み重ねが、大きな安心を生むのです。

 

 

 

■よくある質問

Q1. 便潜血陽性はすぐに大腸がんということですか?

  1. いいえ、便潜血陽性=大腸がんというわけではありません。陽性反応が出る原因には、痔、ポリープ、炎症性疾患などの良性疾患も含まれます。ただし、大腸がんの可能性を完全に否定することはできないため、早期に精密検査(大腸内視鏡など)を受けることが推奨されます。

 

Q2. 偽陽性があると聞きましたが、どう対応すればいいですか?

  1. 偽陽性とは、実際には出血がないのに検査で陽性となることです。これは、食事や痔の影響などによって起こることがあります。しかし、精密検査を行うことで真の原因を明確にできます。陽性結果が出た場合は、放置せず必ず医療機関での精査を受けましょう。

 

Q3. 便潜血検査はどのくらいの頻度で受けるべきですか?

  1. 一般的には、40歳以上の方は年に1回の受診が推奨されています。ただし、家族に大腸がんの病歴がある方、炎症性腸疾患の既往がある方などは、より頻度の高い検査が勧められる場合もあります。医師と相談し、自身のリスクに応じて検査計画を立てるとよいでしょう。

 

Q4. 検査当日に出血していた場合も陽性になりますか?

  1. はい、排便時に痔などからの出血があった場合も、検査では陽性となる可能性があります。このような場合でも、出血の原因が本当に痔だけかどうかを判断するため、やはり精密検査は必要です。自己判断に頼るのではなく、医師の診断を受けることが安全です。

 

Q5. 検査結果が陰性なら安心してよいのですか?

  1. 完全に安心とは言えません。便潜血検査はスクリーニング検査であり、出血していない大腸がんや、出血が一時的でなかった場合は「偽陰性」になることもあります。陰性でも毎年継続して検査を受けること、体調の変化を見逃さないことが重要です。

 

Q6. 精密検査で異常がなかった場合でも検査は続けるべきですか?

  1. はい、異常がなかった場合でも、将来的にリスクがゼロになるわけではありません。ポリープやがんは時間をかけて発生・進行するため、定期的なチェックを怠らず、健康維持に努めることが大切です。